第53話
ここまで来て断るのは逆に失礼かな。
「ありがとう…」
私は素直にお礼を言うと、左手にあるスイセンをじっくりと眺めた。
“うぬぼれ”か…
…でも可愛い。
「一週間くらいは持つと思う」
「でも前に買ったガーベラすぐ枯れたよ?」
「え?あ、そうなの?」
「うん…三日も持たなかった」
「えっ!?そっか…」
お兄さんは少し残念そうな顔をした。
せっかく買ったのにすぐに枯らせるなんて、花好きのお兄さんからしたら悲しいよね。
「やっぱ花瓶とかないとダメなのかな…」
「え?水に挿してなかったの?」
「え…?うん。買った時のビニールに包んだまんまにしてた」
だってうちに花瓶なんてないし。
「そりゃ枯れるでしょ。花だって生き物なんだから。人間の餓死と一緒」
お兄さんが少しムッとしたことに、私はそれを上回るくらいにムッとした。
「そんなことちゃんと言ってくんないと分かんないよ!!」
「ビニールキャップだってすぐ取らなきゃ」
「知らないってば!!」
てか、それが客にする顔かよ。
私はお兄さんからすぐにまたスイセンに目をやった。
勢いで怒ってしまったけれど、やっぱりこれは返すべきかな…
うちよりもここにいる方が長生きするだろうし。
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