第43話

ガタンガタンと揺れるこの電車は、



ちゃんといつも通り私をあの家の最寄駅へと運んでいく。




「…なぁ、やっぱエリカも合コン行こうぜ」


「いや何でそうなるの」


私はそう言ってまた右肘でハルタのお腹を突いたけれど、ハルタは今度は全く痛がる様子はなかった。


「彼氏ができりゃあそんな噂なんかすぐ消えるだろ」


「いいよ、別に」


その噂があってもなくても、私の日常は何も変わらない。


支障があるかと言われれば、全く何もない。



「良くねぇよ」


「うん?」




「…だから痴漢にもそんな頻繁に遭うんだろ」




ハルタは私の左の耳元で小さく囁いた。


「……」


「それに…」


ハルタが言いにくそうにまた口を開いたから、私は窓に映るハルタを見た。


「“お前誘ってくれ”って男どもに言われてんだよ…」



ハルタはまた私の耳元でそう囁くと、少し申し訳なさそうに窓ガラスの私を見た。

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