第38話

「頼んでねぇよ感を全面に出すな」


「あははっ、バレたか」


「ったく…」


ハルタは口ではそう言いつつも、笑いながら立ち上がって私と一緒に教室を出た。


廊下も外も、もう真っ暗だった。


そのまま一緒に歩いて学校を出ると、ハルタはまたすぐに口を開いた。


「俺、ただ一緒に帰ろうとしてエリカを待ってたわけじゃない」


「え?」


「エリカに話があったんだよ」



その軽いノリからすると、あまり重要ではないことなんだろうと簡単に推測できた。



「今週末、合コン行かねぇ?」



やっぱり大したことではなかったか。



「…はい?」



「だから合コン!日曜に隣の女子校とやる」


「ハルタさぁ、半年前に告った相手をよくもまぁそんな平気な顔して合コン誘えるよね?」


「いやだって俺しっかりフラれたじゃん」


「しかもさぁ、女子校相手に合コンするのに女誘うってあんたバカ?」



それがおかしいことくらい、合コンに行ったことのない私にだって分かる。



「俺が参加すれば男が一人多くなる。だからエリカも来てくれたらちょうど五対五になるんだよ」


「ならお前が行くな。自分がはみ出してることに気付け、バカ」


「いや、まぁそうなんだけど……俺も彼女欲しいし…」



ハルタのその言い方はかなり切実だった。


ハルタはバカだけど、憎めないバカだ。


お母さんとは全然種類が違う。

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