第37話

最後に「近いうちお伺いするね」と学年主任に言われて、私は「来る時は事前にちゃんと言ってください」と急に家に来たことのある水口への嫌味も含めてそう言うとすぐに応接室を後にした。



本当に面倒なことになった。


お母さんには…


…いいか。


わざわざ言わなくても。



私は置いたままにしていた鞄を取りに教室へ向かった。





教室にはもう誰もいなかった。



一人を除いては。




「何やってんの?」


教室に入った私は、私の席に座るハルタに近付きながら声をかけた。


天井を見上げる形でだらしなく座っていたハルタは、私の声に顔をこちらに向けた。


「何って…待ってたんじゃん」


「へぇ」


私はハルタの言葉を気にせずに机の隣にかけてあった鞄を手に取った。



昨日得た九千円は…



うん、ちゃんとある。


良かった。



「おいおいおいおい、」


そう言って両肘を机に置いたハルタに、


「え?」


私は鞄の中からハルタへと視線を移した。

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