第23話
「えっとね、面談の…ことなんだけど…」
「うん」
何のことで呼ばれたかが分かっていた私は、担任の言葉にすんなりと返事をした。
「これは、えっと…何かの間違い?」
担任は私が数日前に提出した三者面談の希望日時の紙を見せながら、遠慮気味にそう聞いた。
やっぱり白紙で出すのはまずかったか。
「間違いじゃないよ。面談いらないから、私」
自分で自分の態度のデカさに少し笑いそうになった。
これじゃあどっちが立場が上か分からないね。
「でもね、そういうんじゃないんだ、三者面談って。希望者だけとかじゃなくて全員がすることでね?」
「……」
知ってるっつうの。
「だから、」
「でもうちの親都合が悪いからやらなくていいよ」
「うーん…でもそういうわけには…」
担任はうちの家庭環境をかなり心配している。
お母さんは入学してから一度も学校に来たことはない。来るわけないじゃん、あの女が。
五月にあった家庭訪問だって、「都合が悪い」と言い張り続けて私だけやらなかった。
きっと担任からすれば、クラスの中で私だけが家庭の雰囲気を想像できなくて怪しかったんだろう。
どうしても気になったらしい担任は、私の家までわざわざ急ぎでもないプリントを渡しに来た。
その“生徒思いな先生感”、本当に吐き気がするほど気持ち悪い。
その時、担任は一度お母さんと顔を合わせた。
あの時の担任の顔を見れば、私の心配よりも興味の方が勝っているということはすぐに分かった。
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