第22話

その日の放課後、私は担任に呼ばれた。



理由はたぶん、あれだ。



職員室に着いた私は、「失礼します」と一言呟いて中に入った。


中に入ってすぐに担任を見つけた私は、そのまま担任のところに一直線に歩いて行った。


「先生、」


「あぁ…!ごめんね、急に呼び出しちゃって!」



私の担任は、昨日お母さんが言っていた通りちんちくりんだ。



背が低くて寸胴体型で手足が短くて、今年四月に新任教師となったばかりの二十三歳。


それなのに夏にデキ婚して今妊娠六ヶ月。


学校側だってきっと思ってる。


そりゃないぜって。


でもこの人は憎まれてはいない。


きっといつも笑顔で明るいからだろうけど。

あと、妊娠は無条件で喜ばなきゃいけないっていうみんなの中に深く根付いた常識があるから。




でも私はそうは思わない。


だって生まれない方が幸せだった命がここにあることを知っているから。



「別にいいけど、なに?」


「あ、うん!えっと、えっとっ…」


「……」



この人の何事にも真面目で全力で一生懸命で、それ故にすぐにテンパるその姿はいつ見ても腹が立つ。


お前が呼んだんだろうが。


さっさと用件言えよ、腹立つなぁ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る