第14話

電車を降りて改札を抜ければ、学校まではもう近い。学校に近づくにつれて、私の周りにはうちの制服を着た人が多くなってきた。




「エリカっ!」


後ろから名前を呼ばれて振り返れば、こちらに走ってくるハルタがいた。


「…おはよう」


「お前歩くの早いって…!!」


「え?」


私のそばまで来たハルタは、「はぁ、はぁ、」と肩で大きく息をしていた。



「なに?どうしたの?」


「なにって…別に何でもないけどよぉ!俺、電車降りる時に違う車両から降りてるエリカ見つけて、追いかけたけど駅の改札激混みで…!」


「…あぁ、そういうことか」



駅からずっと私を追いかけてきてくれてたんだ。



「もうちょいゆっくり歩けって…!」


「そんなこと言われても…」


私はそう言いながら、何の意味もないイヤホンを未だにつけていたことに気がついてそれを耳から外した。



「またそれやってんだ?」



ハルタは私に並んで歩き始めると、私がポケットにしまうために指先でくるくると丸めていたイヤホンを指差した。


「うん、そう。虫除けにちょうど良いよ」


「虫除け?」


「間違えた」


虫除けならぬ猿除けだな、こりゃ。


「うん?」


「…あ、いや、こっちの話」


家を一歩出てみれば欲まみれの人間がこの世界にはうじゃうじゃいる。


気持ち悪いったらありゃしない。



…いやでも、家の中にもいたわ。


隣の部屋に誰よりも貪欲な女が一人。



「そろそろ携帯買ってもらえって」


「別になくても困らないし」


「俺が困る」


「……」


ハルタは今年の四月に入学してから何となく仲良くなった同じクラスの男子で、前は私のことが好きだった。


どうしてそれが過去形なのかというと、私がハルタに告白されたのはもう半年も前のことだから。



告白ははっきりとその場で断ったし、それからハルタは何も言わないから今ハルタが私をどう思っているのかは知らない。

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