第91話
朝起きると、窓があるおかげで部屋全体にはしっかりと外の光が差し込んでいた。
「はぁ…よく寝た…」
外は今日も天気が良さそうだな…
ベッドの方を見るともうナツメはそこにはいなかった。
私の体に掛かっていたのは、思った通りの大きなタオルケットだった。
やっぱりなんだかんだ優しいよな、アイツ。
私はそのタオルケットを軽く畳んで立ち上がり、改めてこの部屋をぐるりと見渡した。
この部屋に時計は……ないか。
…ったく、時計もなしにナツメは一体どうやってここで生活してんの?
予定があっても時計がないんじゃいろいろと不便———…んっ!?
ボーッとしていた私は突然ハッとして、慌ててドアを開けてその部屋を出た。
———…ガチャッ!!
「っ、あっ、おはようっ!!」
「…おう」
そこにはまたいつもの場所に座るナツメがいた。
「今何時!?」
私がそう聞くと、ナツメは目の前に置いていた自分の携帯を見て「七時」と教えてくれた。
「…あ、良かった…バイト間に合う…」
寝過ごしていたらどうしようかと思った…
とりあえず私も充電していた携帯を確認しに行くと、充電はしっかり百パーセントになっていた。
よかった…
それに対して「ふぅ、」と安堵の息を漏らしながら右の方に目をやると、ナツメは定位置に座ったまま正面を向いてぼんやりと煙草を吸っていた。
テレビもないからここには何にも音がないな。
おまけにここが路地裏だからなのか壁が厚いのか、周りの生活音もまるで聞こえては来なかった。
「…静かだね」
「……」
何を考えているのか、ナツメは私の声には何も応えずただただぼんやりと煙草の煙をゆっくりと目の前に吐き出しているだけだった。
「…よく寝れた?」
「お前がそれ聞くのか」
「ははっ、たしかに…あっ!」
よく見るとナツメの目の前には私が昨日寝る前に洗ったグラスに入ったアイスコーヒーが置かれていて、私は思わずナツメのそばに近寄った。
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