第90話

「じゃあ私からいくよ?」


「だからやらねぇって、さっさと寝ろ。俺は明日予定があるんだよ」


「そっか…あ、私も明日バイト行かなきゃいけないんだった。私今カフェでバイトしててね、」


「聞いてねぇよ」


「あははっ、確かに聞かれてないわ!」



それからナツメはもう何も言わなくなって、私も明日のバイトのことを考えて寝ようと思いそれ以上は何も話さなかった。



でも目を閉じる直前に私が小さく「おやすみ」とナツメの背中に声をかければ、少し間をあけてから小さな声で「おやすみ」と返ってきた。





















「———…ナツメ…」



さすがにしつこいとは思う。


私だってあのまま朝まで寝たいところだった。


でももう、耐えられない。



今が何時かも分からないけれど、窓の外はまだ夜っぽかった。




「ねぇ、ナツメ…めちゃくちゃ寒い…エアコンの温度上げてくれない?」


「……」


「もしくは布的なものを…」


「……」




今度こそ寝たか…


私はもう諦めて、気休め程度ではあるけれど反転してソファーの背もたれに身を寄せるようにしてまた目を閉じた。



その直後小さな足音が聞こえたかと思うと、私の体の上にはタオルケットのようなものがかけられた。



えっ、!



私はすぐに振り返ったけれど、その時にはもうナツメはまたベッドに戻ってまたこちらに背を向けるように横になろうとしていた。



「ありがとうっ…!」


「……」



ナツメから返事は返って来ず、私もそれ以上はもう何も言わずにかけてくれたタオルケットのようなものに今一度しっかりと体を埋めて目を閉じた。

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