第86話

シャンプーやリンスはそこに置かれていたものを勝手に借りた。


ナツメのもので間違いないとは思うけれど、男用だからなのか少し頭皮がヒリヒリするような感覚がした。



体を拭いてまた同じ服を着ながら私は、まだまだ買うべきものはありそうだなと思った。




タオルで髪の毛を拭きながらフロアの方に戻った私は、コンビニで買ってきた充電器で早速携帯を充電をした。


コンセントはカウンター内ですぐに見つけられたから何の問題もなかった。


これもナツメにちゃんと許可を取るべきかとも思ったけれど、寝ているみたいだからもう仕方ない。



その時にさっきナツメが飲ませてくれたアイスコーヒーのペットボトルが出しっぱなしであることに気付いた私は、カウンターの下に小さな冷蔵庫を見つけてその中にそれを入れておいた。


そこには同じアイスコーヒーのペットボトルと水が数本入れられていた。


たったそれだけだった。



私には関係のないことだということは重々承知だけれど、私は何となくナツメの食生活を他人事ながらに心配した。


まぁでも昨日ナツメは自分の部屋でカレーを作っていたから、きっとそこにはちゃんとした冷蔵庫があるのだろう。





それから私は、ここに置いてもらう感謝の気持ちも込めてさっきのグラスも洗っておいた。




やることも無くなった私は少し眠くなってきて、またいつも私が座るカウンターに座ってそのまま机に突っ伏した。




カウンターの電気は消しといた方がいいのかな…


でも真っ暗なこの場所で寝るのちょっと怖いしな…


てかこの薄暗さも十分怖い…



そんなことをぼんやりと考えている間に、私はいつの間にかそのまま眠ってしまっていた。









「———…い、……おいっ!!!」


———…バンッ!!



怒ったような大きな声とともに机を強く叩くような音が聞こえて、私は眉間にシワを寄せながら目を覚ました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る