第27話

「…すいませ…」


それからすぐに謝りながら顔を上げた私は、その人の見た目に思わず言葉を失った。



スキンヘッド———…



おまけに着ていたTシャツの襟元から左の首筋にかけては何やらよく分からない刺青が顔を出していた。



いやっ…これ本気で関わっちゃダメなタイプじゃんっ…!!!




「なんや、姉ちゃん。こんな時間に一人で何しとるんや?」


「いえっ、何もっ!本当に申し訳ありませんでしたっ!!」


ペコペコと何度も頭を下げながら立ち去ろうとした私に、その男は「ちょいちょいちょい、」と私の右手首を掴んだ。



「っ、」


「そんな逃げんでええやん」


「いえ、逃げてません!!私今ちょっと急いでましてっ、」


「そんな見た目で…どした?なんかワケアリかぁ?」


初めは少し怒っていたその男は、気付けば口元をニヤつかせていた。



「いえっ!大丈夫です!ご心配どうも!!」


「おいおい、急にぶつかっといてそのまま行くとかないやろ。暇なら遊んでやるで?」


そう言って私の手首を掴む手に力を入れたその男に、私の背中には冷や汗が伝った気がした。



「あっ、いやっ、」


「若いな…いくつや?」


「よっ、四十代です!!」


なぜかさっきのコザキングとの設定が蘇った私は、慌てたようにそんな言葉を口にした。



「はっ…んなわけないやん。二十七、八くらいやろ?」


繁華街へ出る直前だったこの場所はそこまで暗くはなかったから、きっとこの男は私の顔がはっきりと見えたんだろう。


男は私の言葉に鼻で笑ってそう言った。



嘘が早速バレたことに焦りつつも、私はその実際の年齢よりも上を言われたことに少しカチンときた。



「っ、違います、私まだ二十六ですから!!!」


「おー、やっぱり若いなぁ。ほな、遊んだるから行こか」


そう言って私を今来た路地裏に連れて行こうとした男に、「はえっ!?」と私は大きくマヌケな声を上げた。



そのガタイは見せかけではなく、この男の私の手首を引く力はやけに強くて私の心臓は震え上がった。

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