第24話
ドアノブも鍵穴も、その鍵ですらもやっぱりどこか頼りなくて、それがなぜか私には二十歳らしいと思えた。
さっきは“今日だけは二十歳だと思いたい”なんて思った私だったけれど、節々で彼をどこか子ども扱いしてしまう私にそれはきっと不可能なんだろうな。
どう足掻いても私は結局二十六歳だし。
そんな現実逃避ができるほど正気を失っているわけでもない。
———…ガチャッ
ついに部屋のドアを開けた彼に、私は今一度「コザキング、」と声をかけた。
「いやもうそれマジで恥ずかしいって」
「本当にいいの?」
「…え?」
「私アラサーだよ?」
もちろん一線を超えたからって私が今後の関係をコザキングに求めたりすることなんてないけれど、一度とはいえやっぱりこんな女を抱くなんて嫌なんじゃないだろうか。
「だからなに?」
「いや、いいのかなって。その…本当にシても」
「いやもう俺我慢できないし。一秒でも早く抱きたい」
「おぉっ…」
うっ…わぁ…
今時の二十歳ってそんなことが言えるんだ…!
今年二十八になったマコちゃんだってそんなことは口にしないよ?
私は食われ…抱かれる側だったのか。
「早く入ろう」と言ってコザキングがやっと私の左手から手を離しその手で私の背中を軽く押した、その時だった。
「———…リュウセイ?」
その声に思わず動きを止めた私達は、自然とその声のした通路へと顔を向けた。
薄暗い通路の先、階段を上がってすぐのところに可愛らしい女の子が驚いた顔でこちらを見ていた。
「えっ、サラちゃん…!?」
あー…これはたぶんヤバいやつだ。
私は特別恋愛経験が多いわけでもないけれど、歳をとるにつれて知らず知らずのうちに身につけていたらしい知識が私にすぐさま警鐘を鳴らした。
「何…してるの…」
「いや、違う…!これはそのっ…」
明らかに動揺するコザキングを左側に感じながら、私の頭はやけに冷静だった。
「…あなた…誰ですか…?」
女の子は驚いた顔からいつのまにか少し険しい顔で私に視線をずらした。
今の私、きっとこの子にとってのホノカの立ち位置になってるな…
くっそ、彼女いるかちゃんと聞くんだったわ。
まぁさっきのコザキングを思い返せば、それを聞いていたところで“いない”って言ってたとは思うけど…
実際この子がコザキングの彼女かどうかは分からない。
でも部屋に上がろうとしていた私を見たその反応とコザキングの焦り具合を考えれば、この子は十中八九コザキングの彼女だろう。
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