第23話

さっきも一応したけど、こんなちゃんとしたキスをマコちゃん以外の人としたのは高校の時以来だな。


私の左手を握ったまま、空いていた左手を私の右頬に添えた彼は角度を変えながら何度も何度も啄むようなキスを繰り返した。


「んっ、」


そのキスも、私にはやっぱりどこか子どもっぽかった。


でもマコちゃん以外の人とのキスである上にこんな場所でするキスだからなのか、私も私でしっかり体はそれなりに疼いて思わず空いていた右手で彼の着ていたシャツの裾を摘んだ。





でも、私の中にはなぜかずっと罪悪感のようなものがあった。


本当の本当に不本意だけれど、それは少しだけマコちゃんに対してでもあって、それに加えてやっぱりこの人のその若さも原因ではあるしそれ以前にやっぱり彼は私の中で“リュウセイ”ではなく“コザキング”だ。




“カヤちゃん”なんて、親戚のおじさんくらいにしか呼ばれないしな。



それでもコザキングが今の私にくれる頼りない安心感は、私に来た道を戻らせるほどの力を持たせはしなかった。


携帯だって充電したいしこの蒸し暑い真夏に外で一晩過ごすとか、コンビニに行く前にお風呂には入っていたけどきっと朝になると髪の毛とかベタつきそうだし。


そこを気にする余裕が今の私にあるのかどうかはよく分からないけど…




このままコザキングとヤっても別に良いと思えるのは、きっとこの一年マコちゃんがホノカを抱きながらも私を抱いていたからなんだと思う。



どっちとするのも重さは変わらない。


きっとマコちゃんとのそれに愛なんてなかったんだから。


あんな奴に抱かれていたことを考えれば、朝食付きのコザキングに抱かれる方がよっぽど見返りもある気がする。





「……早く家行こっか」


しっかり私とのキスを堪能したコザキングは、そう言って私の手を引いてまた家へと歩き始めた。









「俺ん家、ここ」


たどり着いたのは、少し古そうな二階建てのアパートだった。


「へぇ…」


「ショボくてごめんね」


「いやいや、家なき子の今の私にとっては雨風凌げるだけでもう立派な豪邸ですよ」


「あはは、何でそっちが敬語になってんの」



アパートの正面に位置する少し頼りない階段を登ろうと足を踏み出せば、一段上がるたびにパイプの軋むような音が聞こえてきた。


二階へ上がったコザキングは、そのまま通路を左に進んで一番奥の扉の前へと私を連れて行った。

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