第22話

「…酔ってる?」


「まさか。俺そんな飲んでないし。酔ってるように見える?」


「いやそういうわけじゃないけど…飲み過ぎたら男の人って勃たないって聞いたことあるからどうなのかなぁと思って」


「カヤさん………話が早いね」


そう言って小さく笑いながら私の手を取り立ち上がったコザキングに、私も導かれるように立ち上がった。



「俺ん家こっち」


「…うん、」





六つも年下の男の子に手を引かれて歩くのは、案外悪いものではなかった。


彼が男だからなのか、その手もその背中もどこか子どもっぽくて頼りないはずなのにまるで“大丈夫だよ”と言ってくれているようで私は妙に甘えたい衝動に駆られた。


私かなり弱ってるんだなぁ。



今日だけは自分も二十歳だと思いたい…



指先を摘む程度の手の繋ぎ方で私を家へと導くコザキングは、繁華街を少し進むと路地裏に入った。


「この先のアパートっす。そんないい家じゃないんすけどいいすか?」


「うん…てかコザキング、マジで敬語やめよう」


私のその言葉にゆっくり立ち止まったコザキングは、私の左手の指先を掴んだままこちらに体を向けた。



「ならマジで“コザキング”もやめましょう。その呼び方されながら抱くのはだいぶ俺マヌケっす」


「…あ、うん、ごめん。えっと…下の名前って…」


「リュウセイ」


「うわ…若い名前だ…私の代で人気だったのはダイスケでね、中学の時なんか同じクラスに三人もダイスケがいたんだよ」


思わずジェネレーションギャップを感じて余計な話をしてしまった私を気にもせず、彼は「呼んでみて」と少し色っぽい目で私を見つめた。




今そんな話はどうでもいいか…


私ってたぶん空気の読めないタイプだな…



「…リュウセイ」


「…うん、いい感じ」


“いい感じ”とは…?


発音?イントネーション?声量?


今ののどこがどう彼にハマったんだろう。



彼は続けて「カヤちゃん、」と私を呼んだかと思うと、そのままこちらに少し体を屈めてまた顔を近付けた。


そのキスは、薄暗い路地裏ということもあってかさっきよりも遠慮なく舌が私の唇を割って入ってきた。

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