第19話

「コザキング、今暇?」


「え?あぁ、暇っすよ。明日休みだし」


「ちょっと話し相手になってくんない?」


「ははっ、なんすか。なんか面白そうっすね」



彼はこんな今の私が“面白い話”をすると本気で思っているんだろうか。


…とは思いつつも、



「何でも聞きますよ」


あっさりと受け入れてもらえたことに私はどこかで安心していた。




「私ね、ついさっき———…」




あー…何で私コザキングにこんな話聞いてもらっちゃってるんだろう。


私がユラちゃんに求めた肯定はきっとコザキングもしてくれる。だから私は私目線でしかない、二人を完全に悪者にするような話し方で事の経緯を全て聞いてもらった。


きっとその裏側には私には分からない二人の思いもあったと思う。


でも分からないものは仕方ないじゃん。


そりゃあ私は私の知っていることだけを話すしかないよ。



コザキングは案の定無駄に口は挟まず、「うわ、」とか「マジすか」と私の味方になるような相槌を要所要所でちゃんと打ちながら話を聞いてくれた。



でも、欲を言うなら私は二人を知るユラちゃんにこそ肯定してほしかった。


二人のことを何も知らないコザキングに今の自分を肯定してもらっても何も気持ちは晴れなさそうだ。


…本気でそう思うのに、それでも私の話は止まらなかった。





「———…で、今に至る」


「あー…まぁ要するに六年付き合ってた最愛の男を親友に取られた、と」


私の言い方のおかげか、二人は完全に悪者としてコザキングに伝わった。


でも要約してくれたコザキングの言葉に間違いは何もなかったから、これで良かったんだと思う。



「うん」


「で、今行く所がないと」


「うん」


「それならうち来る?」


そう言ってこちらに依然笑顔を向けるコザキングと目が合った時、私はなぜか何言ってんだって思うよりも先に敬語が抜けてることが気になった。


気になったとは言っても“なに急に距離詰めてきてんだよ”とかじゃなくて、“あ、抜けてる…”っていう発見みたいな感じで。



「一人暮らしでここからも近いよ?」


「あー…」


「え、なに?そういう話じゃない?」



私は“お前は悪くない”と肯定してほしかっただけなんだけど、…まぁ確かに話を聞いたコザキングがそう受け取るのも無理ないか。


行くところがなく困っているから助けて欲しいと、遠回しだけどそう言ったようにも思えるよね。



「うん、ただ普通に話聞いてよって感じのノリだった」


「でも色々困ってんだよね?」


「うん、まぁ…」



どうしようかと迷って言葉に詰まる私に、コザキングは「カヤさんってiPhone?」と突然よく分からないことを聞いてきた。


「え?うん」


コザキングは私のその言葉に小さく口元を緩ませると、「これ見てよ」と言ってポケットから何かを取り出した。


取り出されたのは新型のiPhoneだった。



「え?」


「とりあえず携帯充電したくね?」


「あっ…!!!」



充電!!そうだよ、携帯の充電!!

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