第18話
「あっ…!やっぱりカヤさんだ!」
顔を上げた私にそう言って駆け寄った男…の子。
誰だっけなんて一瞬思ったけれど、その人懐っこい笑顔を見ればすぐに思い出せた。
「…あっ、コザキング?」
「ちょっと、その呼び方もうやめましょうよ」
「ごめん、コザキくん」
懐かしいな…
彼は私が今のカフェでバイトを始める前に働いていたレストランのバイトの子だった。
「めっちゃ久しぶりっすね。元気でした?」
そう言って左隣に座った彼は、あの時は高校生だったのに今はもう立派な社会人になっていた。
…あ、いや、立派かどうかは分かんない。
だってあの時のコザキングって彼女もいたことなさそうなピュアな高校生だったのに、今は何だかこの繁華街に馴染んでるっていうか普通の若者っていうかチャラそうっていうか…
立派と言うよりはそれなりに大人の階段登りましたって感じだな。
「うん、元気。えっと…何歳になったの?」
久しぶりに会って聞くことがこれって…私なんかおばあちゃんみたいだな。
「二十歳っすよ。言うてあの店が潰れてからだから二年ぶりくらいじゃないすか」
「あぁ、二年…」
この二年なんてあっという間だったのに遠い昔に思えるのが不思議だよなぁ…
自分でも気付かないうちに年老いてそうだな、私…
「こんなとこ座って、待ち合わせっすか?」
…足なんか組んじゃって。
“コザキング”なんてふざけた名前つけてからかってた二十四歳の自分がちょっと恥ずかしいわ。
「…はぁ…いや、てかこの見た目で待ち合わせはないでしょ」
土曜の繁華街だよ?
人めっちゃ多いよ?
それなら私だってもうちょい頑張るさ。
ふと足元に目をやれば親指の爪の端のマニキュアが剥がれかけていて、私はなんとなくそれを隠すように膝から下を少し手前に引っ込めた。
まぁこんなのは無になるくらい今の私って見窄らしいと思うけど…
「え、じゃあ何やってんすか?もう二時過ぎてますよ?」
そう言ってニコニコ笑いながらこちらを見るコザキングに、若くて悩みもなさそうで私は少し羨ましくなった。
「そっちは何やってたの?」
「あー、会社の人とちょっと飲んでて…今はその帰りっす」
「帰る家あるんだ」
「いや、あるっしょ!!」
そう言って、コザキングは楽しそうにバシッと私の左肩を軽く叩いた。
お酒飲んでるからって馴れ馴れしい奴め…
昔はちょっと手が当たっただけで恥ずかしそうに謝ってきてたのに。
二年でこの人はお酒を飲めるようになって、それからきっとそれなりにいろんな経験を積んだんだろうな。
だから深夜の繁華街にこんなにも馴染んでいるんだろう。
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