第17話
完全に終わったわ…
もう路頭に迷うしかないじゃん、こんなの。
この時代に帰る家もなく携帯の充電まで切れるとか、今の私どんだけどん底だよ…
「はぁ…」
またため息を吐きながらうんともすんとも言わなくなった携帯から顔を上げると、私の前を行き交う人の視線が少し気になった。
「…なに見てんだよ…」
それはそれはとにかく小声で、
もう本っ当に、絶っっ対に誰にも聞こえないように細心の注意を払いながら私の口をついて出てきた。
こんなとこで誰かに絡まれたって困るし私喧嘩とかできないし、気は強い方だと思うけど怖い人とかに歯向かう勇気なんかあるわけないし。
何かあってお金で解決できるほどのお金もないしな。
財布の中身はコンビニに行った時に見たからちゃんと分かる。
たぶん今は二千円くらいしか入ってない。
キャッシュカードは入っているからコンビニとかでお金をおろそうと思えばおろせるけれど、この期に及んで手数料がもったいないとか思ってるし。
てかなんならあのプリン代請求してやればよかった、とか…
ふとあのレシートを財布にしまったのを思い出して、私は携帯と入れ替えるようにバッグから財布を取り出した。
“きみだけのとろ生カスタードプリン”
きっと“黄身”と“君”をかけてるんだろう。
まぁなんと素敵な名前だこと。
二百二十四円か…
二つで四百四十八円…
それがあったところで結局今の私の状況は何も変わらなかっただろうと思えば、虚しすぎてまた泣きたくなった。
虚しいやら惨めやら…
「っ、はぁっ…」
何度目かも分からなくなった渾身のため息を吐き出したその時、
「え…カヤさん…?」
何となく聞き覚えのある声に名前を呼ばれて、私はすぐに顔を上げた。
でもその声を当てにするつもりはなかったから、顔を上げた私はきっとものすごく間抜けな顔をしていたと思う。
…だってその声、明らかに男の声だったし。
こんな見るからにお風呂上がりで寝る直前です、イエイみたいな見た目でさ、こんなとこ座ってため息とか恥ずかしいったらありゃしないよ。
そんな服装に加えて頭のてっぺんで胸まで伸びた髪の毛を緩くまとめ上げた髪の毛だって散々走ったせいできっともうボロボロだと思うし。
でも別にそれを気にする意味もないと思うからあえて直しもしないけどさ。
…かと言って路地裏とか人気のない公園とかは怖いし、まだ明るくて人のいる繁華街の方が命は無事でいられると思うんだよね。
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