第16話
『ガチャッ…はい』
「あ、もしもし…ユラちゃん?」
『うん、カヤどしたー?』
「…突然ですが泊めてください」
きっと詳しいことは会えば言いたくなくても言ってしまうと思うから、私はあえて用件だけを先に口にした。
聞いてほしい。
それで、あの二人に怒ってほしい。
“最低だ”とか“クソだ”とか、“別れて正解だよ”とか…それでとにかく今の私を何でもいいから肯定してほしい。
それも、二人のことを知っているユラちゃんなら成し遂げてくれそうだ。
そう思ったけれど、
『あー…今日…だよね?』
ユラちゃんのその言葉に私はなんだかまた無性に泣きたくなった。
「だめ?」
『今ジュンが来てんだよね…』
「あー…彼氏くん…」
そっか。
そりゃそうだよね。
今日は土曜だし、全然それもありえることじゃんね。
そういえばユラちゃんとその彼氏くんも結構長い付き合いだったよな。
同棲とかしないのかな。
もしするとか言ったら、今の私なら全力で止めちゃいそうだな。
私とマコちゃんの別れは同棲が直接的な原因ではないけれど、何となくうまくいくところが想像できない。
『どした?何かあった?一大事とかならジュンに言って今日のところは帰ってもらうけど』
躊躇いなくそう言ったユラちゃんの向こうから、『マジか』と呟く男の声が聞こえた。
「…ううん、大丈夫。でもありがとう。こんな時間にごめんね」
『それは全然いいけど…マコトくんと喧嘩でもした?時間も時間だし、意地張ってないでさっさと帰って謝っちゃいなよ』
「ありがとう、ユラちゃん…愛してるよ」
突然の私の愛の告白に、ユラちゃんは『はいはい』と流しつつも『最悪カナやんなら泊めてくれると思うよ』と親切にも次なる当てを私に示してくれた。
「ありがとう…早速カナやんに聞いてみる」
『…あんたマコトくんに謝る気はないんだね』
「うん…また今度詳しく話すね」
『うん、わかった。じゃあ切るね』
それからすぐに電話は切られた。
今は絶賛親友に裏切られたと思っているはずなのに、ユラちゃんとの電話で私は“持つべきものは友だな”と思った。
ユラちゃんとは短大で出会った。
少しサバサバしてて自分をしっかり持ってる感じが、私はとにかく好きだ。
きっとユラちゃんなら、私の悪いところはちゃんと指摘しつつも最終的には私の味方でいてくれる。
“意地張ってないでさっさと帰って謝っちゃいなよ”
…違うんだよ、ユラちゃん。
もう私が謝ってどうにかなるようなレベルのことじゃないんだ。
それに今でも私は謝るべきなのは向こうだって思ってるしさ。
それに“出て行くのいつになるかな”とまで言われちゃったんだもん。
もうどうしようもないよ。
ついさっきの出来事だけれど、私にとってのマコちゃんもマコちゃんにとっての私もきっともうとっくに過去になった。
終わったんだ、全て。
さぁ、気を取り直して。
えーっと、カナやん、カナやん…
頭の中で名前を呼びながら携帯を下にスクロールしていたその時、突然パッと携帯の画面が真っ暗になった。
「えっ…!!??」
嘘でしょ…
ここに来てなんという落とし穴…
そうだ、私いつも寝る時に充電器挿すから寝る前はいつも充電ギリギリなんだった…
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