第13話
二人が一年も前からそういう仲になっていたなんて知りもしなかった。
ていうか、疑うわけがなかった。
親友の定義が何かは私には分からないけれど、それでもやっぱり私はホノカは親友だと思っていたし、それにマコちゃんだってっ…
私の六年…
目にじんわりと浮かんだ涙は悲しみからくるものではなく悔し涙だった。
貴重な二十代を半分以上も無駄にした気分だ。
玄関にたどり着いた私が何も考えずに履いたのは、さっきコンビニに行く時に履いていたサンダルだった。
まだ何の考えもないけど、とりあえずムカつくから早く出てってやりたい。
そう思ってドアノブに手をかけたその時、
「———…カヤ!」
突然聞こえたマコちゃんの大きな声に、私は動きをピタリと止めた。
———…どっちからちょっかいを出したのかは分からない。
ホノカが本当に私が彼氏だと紹介した時からマコちゃんのことがタイプだと思っていたなら、ホノカが先に仕掛けたのかもしれない。
でももしかすると、私のことをあまりよく思っていなかったらしいマコちゃんがホノカを誘ったのかもしれない。
でもそれがどちらにせよ、私はきっとホノカを一生恨んでしまうと思う。
“友達の彼氏に手を出すなんて最低だ”とか、仮にマコちゃんに誘われたんだとしても“友達の彼氏の誘いにまんまと乗るなんてどうかしている”とか。
…でも、マコちゃんは違う。
やっぱり私は今でもマコちゃんが好きだから誠心誠意謝られたら許してしまうだろうし、引き止められればすぐにサンダルを脱いでマコちゃんに抱きついてしまうと思う。
きっと今回のことを乗り越えたって私は常にマコちゃんに疑いの目を向けてしまうだろうし、今回のことはきっと一生根に持つだろうけど、
それでも今は引き止めてほしいと心から思っている。
それが私の、素直な本音だった。
「…鍵…置いてってくれる…?」
…でも、そんなうまい話があるわけないか。
コンビニで見た時刻は一時半を回っていたから、きっと今はもう二時になる頃だろう。
こんな時間にTシャツとスウェットのショーパンにサンダルで、こんな小さなショルダーバッグに携帯と財布しか持たず出て行こうとする私に、
お前はそんなことしか言えないのか…
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