第3話

『単刀直入に言うと私マーくんのことが好きで、マーくんも私のこと好きって言ってくれてて…だから別れてほしい…順番間違えて本当にごめんね…』


「……それ本当?」



久しぶりに口を開いた私の言葉は、絶対に悪いのは向こうのはずなのになぜかこちらが弱者のような小ささになってしまった。



『あ、うん…私実はカヤに同棲し始めた彼氏だって紹介された時からタイプだなってすごい思っ』


「そうじゃなくて」


『…え?』


「マコちゃんもホノカのこと好きって」


『…あ、うん、…本当だよ。“俺もそろそろ真剣に将来のこと考えなきゃ”って。“それならやっぱりその相手はホノカが———…』








…嘘だ。


絶対嘘。


ホノカって昔から思い込み激しいとこあったじゃん。


高校の時だって付き合ってた先輩が他の女子とちょっと仲良く話してただけで“浮気してるかも!!”って散々騒いで泣いたけどあれもただの早とちりだったし、


短大でユラちゃんが企画した合コンだって自分は誘われてないって散々騒いだけど実際は自分がその誘いのメール来てたのを忘れてただけだったし。



今までのそれは自分にそこまで影響がなかったから笑って流せたけど、今回は違う。




てか“マーくん”って何。




『———…だから、別れ話…進めてほしいなって』


「…私が?」


『いや、カヤがってことはないけど…どちらかが進めなきゃどうしたって進まないことだと思うから』


「……でもマコちゃん、今日全然普通だったよ」


まだ全てがホノカの暴走にしか思えない私がそう言えば、ホノカは案外落ち着いた声で『うん?』と聞き返してきた。



「だから今日。私達、普通にいつも通り一緒に朝起きて昼くらいには自転車に二人乗りでスーパーに買い物とか行ったけど」



左手にはさっきコンビニで買ったマコちゃんの好きなプリンが入っている袋を持っていて、“今は真夏なのにずっとこんなとこにいて大丈夫かなぁ”と私は呑気なことを思っていた。


それくらい、ホノカの言うことが馬鹿馬鹿しかった。


私がいるのは店の目の前というのもあって、店の灯りに虫が寄ってきてるのか剥き出しの両足が少しムズムズして私は思わずその場で軽く足踏みをした。



「んで夜ご飯はマコちゃんが“パスタが食べたい”って言うから二人でパスタ作って食べたよ」



私がなぜか自信満々に言ったそれは、



『…まぁ別れ話をする日でもお腹は空くからねぇ』


「……」



ホノカの正論によって呆気なく無にされた。



たしかに…


でも私にとっては“自転車に二人乗りで買い物に行った”とか“二人でパスタを作った”っていうのが割と重要だったりしたんだけど。

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