第4話
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陽がすっかり沈んだ頃だった。
バスのヘッドライトがハイビームでバス停を直撃する。
一瞬強く目を瞑って眩しさから逃れた。
ゆっくり瞼を開いて隣に目やる。
隣に居たはずの彼の姿はどこにもなかった。
プシューっとバスの扉が開く音がする。
俺は茫然と立ち尽くしてしまう。
バスの運転手が声を張り上げた。
「おいっ!乗らないのか?」
ビクっと肩が跳ねて慌ててバスのステップを駆け上がった。
後ろで扉が開いた時と同じ音でプシューっと閉まる。
俺はクルっと勢いよく振り返ってバス停を見たけど…
やっぱりそこには誰も居なかった。
バスを待ってたんじゃないのかな…とか
誰かの車に乗ったのかな?とか
気にならないわけなかった。
正直…
一瞬で消えた…
それが正しい気がしたからだ。
いや…まさかな…
俺、疲れたのか、じゃなきゃ熱中症とかで…
バスの背もたれにバカらしくなって倒れこんだ。
どうしょうもない暑さは
いつのまにかこの記憶を薄れさせた。
だけど、おかしな事に、俺は何故だか翌日もバスで帰る事に決めていた。
何かを期待していたたわけじゃないと思う。
多分…
まだまだ明るい夕方、図書室で借りた夏目漱石を鞄にしまった。
担いだ鞄 、白いカッターシャツに黒のスラックス、足元はローファーというありふれた制服姿の俺は、下校前に廊下にある大きな姿見に映る自分の姿を見直した。
前髪を払って流してみたり、シャツの襟を直したり、ボタンを無駄に一つ多く外したりした。
「何やってんだ…俺」
自嘲した笑いに任せて歩みを進めた。
あの…ぼろぼろの
バス停へ。
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