第62話

62


寮に帰ってから、相葉の部屋にメモを滑り込ませた。


"瑞季、意識取り戻した。もう大丈夫だ"

心配掛けたから、アイツにはちゃんと知らせておきたかった。

ただ、部屋は留守で俺は泣き腫らした顔を見せたくないのと、随分体力と精神力を使ったせいか、酷く疲れていたから、メモに頼ったんだ。


部屋で瑞季のパーカーを抱いてベッドで丸くなる。


瑞季の意識が戻って、俺の事を理解していた。

もうそんな事で十分で、昨日までとは全く違う夜だった。


早く…

早く腕の中に抱いて眠りたい。


瑞季…明日は何を話そうか…。

俺たちが離れてるのなんて…

いつぶりかについて…


なぁ…今日俺が言った事、ちゃんと本気にしろよな…。

一生離してやらない。

20歳になったら…ちゃんと俺達に出来る結論を出して、お前が感じてる不安を消してやるから。


色々調べて、最善の方法で

俺とお前は家族になるんだ。


瑞季のパーカーを抱く腕に力を込めた。


俺とお前はアダムとイブで


楽園から追放されたなら、この地上で二人、生きていくしかないんだよ。

だからお前は死ななかった。

俺と離れちゃいけない。


運命だってそう言ってる。


おまえは気付いてないだけ。

俺はきっと、もう壊れてる。

お前に狂って依存して、こんなに身体中が好きだって騒いでんだぜ?


気づいたらきっと、得意げに笑ってくれるだろ?

おまえはバカだって…



そう言われるのを、待ってるから。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る