第52話
52
『アイツ…松木が元カレに振られた話…多分相当堪えたんだよ…俺に、いい父親になるって言うんだ。おまえは普通に幸せになれるって…いつまでも一緒に居られないって!社会ってそういうもんだって!…』
『杉野…』
『そんなっ!そんなのさっ!ぅ…ぅゔ…わっかんねぇのにさ!普通の…幸せなんてっ!女と結婚してっ!SEXしてっ!子供作ってっ!毎日毎日っ!瑞季と別れた事後悔しながら生きてくのがっ!!ぅっ…それがっ!そんなもんが幸せなら俺はいらないっ!!なのにっ!なのにっアイツはそんな馬鹿げた未来にビビって自分だけ死のうとしたんだっ!!ぅゔ…うっ…』
相葉が俺の肩を抱いた。
『……泣きなよ…』
相葉は小さく呟いた。
俺は相葉の肩口に額を押し付け、嗚咽を殺す。
『今は市川居ないから…大泣きのチャンスだよ…。杉野は…市川を傷つけない。別れたりもしない。帰ったら…お説教だね』
俺は泣きながら吹き出した。
相葉の言葉は優しくて、本心で、真っ直ぐで、良い奴だなって思ったら…大泣きしながら笑ってしまった。
相葉の、帰ったらお説教だね…には大賛成。
泣きながら飲むビールには…涙が…鼻水が…バカみたいな青春が混じって
正直温くて不味かった。
相葉ももらい泣きみたいに泣き出すから
俺達は温くて不味いビールを
大人のフリをして煽りきった。
雨は上がって…2人分の紫煙が絡みながら空に登って
霞んだ。
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