第42話

42


俺と瑞季の学校生活は以前にも増して一緒に居る時間が増えた。

相葉のいう美人狩りはあれ以来動きを見せない。

俺たちは、休み時間を大抵瑞季の席で過ごし、光を遮る為に引かれたカーテンの裏側に隠れてキスをしたり、美術準備室で我慢出来ない身体を抱きしめ合ったりした。


生活の全ては瑞季で、多分、瑞季もそうに違いなかった。

ただ、その合間に射し込む濁った視線は嫌でも俺たちの邪魔をして、特に瑞季の心を不安にさせた。

このままじゃいけないな…。

松木…桜ノ宮…

あの二人…


「なぁ孝也…松木さ、桜ノ宮の事好きだよな?」

外の木陰で膝枕して貰って昼休憩を堪能している時だった。

瑞季がチョコレートデニッシュにかぶりつきながらボンヤリ呟いたんだ。

俺はビクッとビックリして身体を起こした。

大きな木の幹に背中をもたれさせて隣の瑞季をチラッと見つめた。

「何だよ!」

『いや…ビックリして…』

「だから何が!」

『おまえが他人に興味持ってる事にだよ』

俺はソッと瑞季の顎に触れた。

デニッシュの生地が付いていて、俺はそれを引き寄せて舌先で取り除く。

瑞季が赤くなって…それから俺のネクタイを掴んでグイッと引っ張った。

『ンッ…』

重なった唇からクチュっと舌が入って来て、瑞季がうっとり目を閉じる。

ゆっくり離れ鼻先を擦り合うと

「俺は孝也以外興味なんてない。孝也に絡んでくるから…」

『だから気になってたのか?』

「悪いかよっ!」

『ふふ…全然悪くねぇわ…逆に愛されてて幸せ』

「バカじゃね」

『瑞季…好き。もっかいして…』

俺は額と額を合わせながらおねだりする。

瑞季は俯いていた顔を斜めに逸らし


深く俺の唇を塞いだ。

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