第32話
32
部屋に戻った俺たちは扉を閉めてすぐに抱きしめ合った。
そのまま…縺れるようにして俺のベッドに入る。
「ふふ…せっま…」
『シングルだから仕方ねぇだろ』
「無駄に身長ばっか伸びる…」
『羨ましいだろ』
「べっつにぃ」
二人、いつものように抱き合って眠る。
時折、キスをせがむ瑞季があまりに可愛くて、今までよくも手を出さず、こうして腕に抱いて眠っていれたもんだと自分に感心した。
意識が揺ら揺ら揺れる。
抱きしめた首筋から甘い香りが立って、心地良い。
瑞季の寝息が静かに響き出した頃…俺もゆっくり意識を手放した。
翌朝は土曜で、俺達はダラダラと寝過ごして朝食を逃してしまった。
一応食堂に乗り込んだら、おばちゃんが余った林檎を一つだけ分けてくれた。
「孝也がグーグーいつまでも寝てるからいけないんだぞ!」
お姫様は朝食を逃してご立腹だ。
俺はシャツの裾で林檎をグイッと拭いて瑞季の唇に押し当てた。
うるさく騒いでいた口が止まり、林檎越しに上目遣いで俺を見つめ…
シャリ…
爽やかな甘い香りがして、瑞季が口をモグモグさせる。
部屋に入ってベッドに座って瑞季を抱き寄せた。
『美味い?』
「美味いも何も…林檎だよ…」
俺は齧り付いた林檎をベッドに転がしたまま瑞季を押し倒した。
手首の痣はまだ取れない。
視界に入った赤い欠けた林檎を見つめながら瑞季にキスをした。
柔らかな唇と、甘い蜜が溶けた林檎の味が口内を満たしている。
握り合った指先がピクンと反応して
「孝也…」
熱に浮かされたような声が俺を誘った。
『今日は…何して過ごす?』
頰に…瞼に…首筋にキスをしながら問いかける。
「くすぐったい!…何って…バカ…」
『言えよ…なぁ……俺達…何すんの?』
瑞季は少し悔しそうな目をして
「…SEXだよ…」
そう言って、俺の頭を引き寄せた。
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