第31話
31
食堂に入った。
夕飯の時は混み合う事はあまりない。
部活に励んでる奴は帰りが遅いし、超エリートコースの奴らも寮に帰ってから時間割みたいなのが有るらしいからだ。俺達みたいに平凡な普通コースの奴らは割と早いうちに飯が食えた。
「今日うどんとおにぎりと天ぷらだってさ」
入り口の扉にぶら下げられた小さなホワイトボードに雑に書き込まれたメニュー。
『ラッキー、うどん好き』
「孝也は何でも好きじゃん。」
『るせぇなぁ…そうだけど』
ピッタリ俺にくっ付いてくるから、そのまま配膳カウンターを並んで歩いた。
トレーにうどんを乗せる。
『梅?と…ちくわの天ぷら?』
「うん…良く分かるな…」
『分かるよ…じゃ、俺は?』
「明太子と…シーチキン…あとは、イカ天とエビ天じゃね?」
『ふふ、大正解』
「孝也は子供が好きなもんが大好きだよな」
瑞季がククッと悪戯っ子みたいな笑い方をする。
『うっせぇ!そういうのが1番人気なもんなんだよ!座んぞ』
俺は割り箸を口に咥えて席を探し、返却口近くに座って食事を始める。
瑞季の前髪が凄く邪魔そうに見えた。
『髪、食う時だけ縛ったら?』
うどんを啜りながら呟いた。
「ん?あぁ…そうだな…ゴム買わなきゃ」
『あ〜…俺も買わなきゃなぁ』
「孝也、ゴム買ってどこに使うんだよ!」
笑いながらおにぎりにかぶりついた瑞季をジッと見つめて
『俺の息子用…』
目の前の瑞季がブハッと米粒を飛ばして来た。
真っ赤になりながら俺をビシッと指さして、吃りながら怒鳴り散らす。
「バッバカじゃないかっ!おまえ!なっ何がむっ息子用だ!言っとくけどな!おっ!俺はそんなっ!」
グイッと瑞季に近づく。
『俺はしたい…瑞季と…いっぱいしたい。』
チラッと目を逸らしてからもう一度視線を合わす。
もうゆでだこばりに真っ赤な瑞季が可愛くて
『早く食えよ、のびるぞ』
と話を逸らしてやった。
いつもならキャンキャン噛み付いてくるのに…グッと言葉を飲み込みながらうどんを食べる瑞季が可愛いかった。
「孝也のくせに…生意気なんだよ」
瑞季の強がりに
俺は思わず微笑んだ。
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