第30話

30


サイダーを手に部屋へ帰った。

瑞季がすぐ振り返って首を傾げる。

「何でまたサイダーなわけ?」

『あぁ〜…まぁ、たまには?ホラ、何かシュワシュワしててさ…』

「んだよ、それ。意味わかんねぇし。どーせ孝也の事だから押し間違えただけだろ」

机に頬杖を突いて興味が無くなったみたいにパソコンに向かって背中を向ける瑞季。

俺はサイダーを見つめて一口、口に含んだ。

後ろからトントンと肩を叩いて瑞季が振り返る。

唇を塞いで口に含んでいたサイダーを流し込んだ。

「んっ!!」

ビックリして目を見開く瑞季。

『ふふ、シュワシュワしたろ?美味い?』

瑞季はやられたって顔をして手の甲で唇を拭う。

「シュワシュワじゃねぇよ!バカっ!ぬるい!不味いっ!」

『はいはい、ごめんって』

俺は頭を掻きながらベッドに座ると、デスクに居た瑞季も隣に来て座った。

「サイダー甘いから嫌い。…でも……孝也のキスは…好き」


今度は俺がビックリさせられて目を見開く。


あぁ…やべぇ…マジでコイツ…すげぇ…可愛い。

俺は後ろ手に付いていた片手を瑞季の後頭部に回してゆっくり顔を引き寄せた。

お互いに傾け合った顔、深く重なる唇。


溶けるような水音が神経を麻痺させて、身体中が性感帯みたいになる。


ずっと、お互いだけを助けあってきた。


あの冬の夜、おまえの手を引いてから…


ずっとそれは

今も…変わらない。

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