第21話

21



消灯後にコッソリ瑞季と煙草を吸った翌朝、俺は自分の体が自由に動かない事に気付いた。


『ぅゔ……何だ?みっ瑞季っ!どうしたんだよ』

目が覚めて気づいた。しっかり瑞季に抱き枕にされてる事に。

「ん〜〜…ぁ…あぁ…多分夜中に寝ぼけてこっち入っちまったんだな…悪りぃ」

俺にしがみついていた腕をどけて頭を掻きむしりながら自分のベッドに移動する。

『あっ!バカ!寝るな!もう起きる時間なんだよ!』

瑞季は自分の布団に潜りながらヤダァ…ってくぐもった声を返した。

『ダァーメだっ!ほらっ!起きて!』

「ったく!保護者かっ!」

『言ってろ!バァーッカ』

俺は制服に着替えながら口喧嘩に付き合った。

最終的にシーツを頭から被った状態の瑞季の前に胡座をかいて座り、にらめっこだ。

『ネクタイ…結んでくんねぇの?』

シーツを頭からゆっくり後ろへ下ろしてやる。

「ふふ」

『なんだよ…』

「誓いのキスみたいじゃね?ベールアップ…」

『バッ!バカか!ただのシーツだ!』

瑞季が俺を真顔で見つめた。

それからすぐにブハッと吹き出して笑い出す。

「分かってるよ…ムキんなるなって、ホラ、ネクタイ……結ぶんだろ…」

『…ん』

シュ シュ シュル…


臙脂色の…拘束具。


何故だかそんな気持ちになって、瑞季がネクタイを締め終えた手を掴んでた。

「な、何だよ…」

『ぃ、いや…ありがとう』

「?…おぅ」

パッと手を離してベッドから降りた。


瑞季に毎朝…俺は拘束される。

臙脂色のネクタイで…。

それは…勿論俺を妙な気分にさせて、熱い息が漏れた。

『瑞季…悪い、先に食堂行っててくれ』

「どうした?」

『いや、ちょっと腹痛い』

「大丈夫かよ」

瑞季が心配して、背中を向ける俺の肩に触れた。

『大丈夫!席、無くなるからさ、早く行けよ』

急かすように言うと、瑞季は着替えを済ませて部屋を出て行った。


俺は閉まった扉を確認して…下半身を押さえ付けた。

トイレの個室にこもり、押さえの効かない反り勃つ熱に手を絡め、片方の手で口を押さえた。

息が荒くなって、熱に絡めた手の平に力がこもる。

『ふぅっ…くっ…っっ!!………ハァ、ハァ、クソッ!!』

俺は…これが朝立じゃない事くらい分かっていた。

だから…

怖くて…

自分が怖くて仕方なかった。


少しずつ俺を誘惑してくる



アイツこそが…



イブじゃないか…。

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