第20話
20
休み時間に教室に入って真面目に一日授業を受けた。
その日は結局一日中雨で、瑞季は疼く背中の古傷を庇いながら過ごした。
休み時間になっても、上級生は現れず、相葉や二宮にも変わったところは無さそうだった。
寮に帰ってからも、生活を乱すような事は何も起きず、消灯時刻になったら、寮長が点呼に来て俺達を確認したら、扉がしまった。
ウォールランプだけの室内はキャンドルでも灯したような光で俺は嫌いじゃなかった。
デスクの奥深くにしまった煙草を取り出す。勝手口の扉を少しだけ開いて咥えた煙草に火をつけた。
肺に引き込んだ煙りを細く静かに吐き出す。後ろから肩に手が掛かかり、振り向くと瑞季が
「俺も欲しい…」
そう言うから、箱を軽く揺すり一本を取り出した。
瑞季は俺の咥えていた煙草を抜き取って口に咥える。
「これでいい。」
俺は気にせず、新しく出した煙草を自分で咥えた。
瑞季が顔を寄せてくる。
煙草の先を合わせ火を移してくれる。
長い伏せた睫毛が…綺麗だった。
二人で並んでフローリングに座り煙草を吸った。
瑞季がグデンと俺の膝に寝転んでくる。
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勝手口の隙間からは大きな桜の木が見えて、雨が止まないのが見える。
『背中は?…まだ痛い?』
「ん〜…今は大丈夫…気分良い…雨…嫌いだけど」
膝枕の状態で呟く瑞季を見下ろす。
俺は煙草を咥えて、瑞季の前髪を撫でた。
『髪…邪魔じゃない?』
「ふふ、長すぎかな?」
『いや…俺は嫌いじゃないけど…サラサラしてて触ってると気持ちいいし』
「じゃ、切らない」
『じゃって何だよ、じゃって…変な奴』
「…孝也に言われたくねぇ…」
『何だそりゃ。』
どうだって良い会話が心地よくて、どさくさに紛れて俺は瑞季の髪をずっと撫でていた。
瑞季は…煙草を吸いながら、うっとり目を閉じるから…
許されてるって…優越感みたいなモノを
感じていたんだ。
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