第19話
19
廊下に放り出された俺達。
「ふふ…アハハ…ハハハ!」
瑞季が腹を抱えて笑い出す。
俺はキョトンとしてしまって頭を掻いた。
「松岡の奴さ、やり部屋にすんなって!何言ってんだろな!!アハハ」
『あ、あぁ…ほんっと、バカバカしい!何言っちゃってんだろな!』
瑞季が目尻の涙を拭いながら俺を見た。
笑い転げてたくせに、急にピタッと静かになって、俺に視点を合わす。
「おまえ、松岡に相談したの?」
『……するつもりじゃなかった。瑞季は俺が守るつもりだから…たまたま、おまえを探し回ってる時に、あっちの校舎の奥の屋上手前の踊り場に居たんだよ』
「一人で?」
『一人で。』
頷きながら返す。
「何で?」
『校内禁煙なんだってさ。職員室もダメなんだろ。だから…隠れて吸ってた。誰にもいうなよって。その時に…隠れる場所は貸してやるって。煙草の件と引き換えにな。』
「………へぇ…」
瑞季はさっきまで居た廊下の向こう側にある準備室を見つめた。
『戻ろうぜ。授業』
「…うん」
俺達は肩を並べて教室に向かった。
何か…色々うやむやになったけど…これで良かったんだよな…。
俺は頭を掻いて、窓の外を眺めた。
雨は降り続いて、桜がどんどん花を手放す。
剥き出しの枝には、幾つかの青い芽が見えた。
春が終わる。
そんな気がして、瑞季のブレザーを
…見つめた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます