第8話
8
♪〜
携帯のアラームがどっかで鳴ってる…
『う…るせぇ…』
「孝也…止めろよ…」
『何で俺なんだよ!さみぃからヤダッ!」
「てめぇのアラーム音だろが!」
『いやいやっ!これ鳴ってなかったらおまえ遅刻だかんなっ!』
「うっせぇ!さっさと止めろよ、このバカ!」
瑞季にベッドから蹴り落とされて床に転がる。
『くっ…そぉ〜っ!!どこだっ!携帯っ!!』
制服ブレザーのポケット、スラックスのポケットを探り回ってようやく携帯を発見した。
画面をタップしてベッドを振り返ったら、サッサと制服に着替えた瑞季が鏡に向かってネクタイを締めていた。
ガクッと肩を落とす。
全くコイツには敵わない…。
朝…どうして一緒のベッドで寝てたかなんて、俺はわざわざ言わないし、瑞季もそれを分かってる。
一度だけ話した事がある。その時の瑞季は、これ以上ないくらい恥ずかしそうに俯いて、何度も俺に謝ってきた。
俺は…あんな瑞季はもう見たくなかった。
だから、昨日みたいな事があって、朝目が覚めた時に俺の腕の中に居ても、瑞季は何も聞いて来なくなったし、俺も勿論何も言わなくなった。
きっと…覚えてなくても分かってるんだ。
俺はノロノロとカッターシャツに腕を通して、臙脂色のネクタイを首に掛けた。
「孝也…」
瑞季が俺のネクタイを引っ張る。
俺は昨日言われた通り顎を上げた。
『んっ』
「ふふ…」
『なんだよ』
「いや、首輪付けられて散歩行く犬みたいだなぁって」
俺は瑞季のネクタイを掴んで軽く引き上げた。
睨み付けるように顔を近づけて
『だぁれが犬だっ!誰がっ!』
瑞季はギュッと俺のネクタイを締め上げてプイッと顔を逸らす。
掴み掛かったネクタイを俺はソッと離した。
『なぁ…おまえ顔、赤くない?』
「は?」
『熱とかねぇよな』
「ねぇわ!」
だって…さっき顔逸らした時真っ赤だったし…。
いっつも無理するからこっちが様子見てないと倒れかねないんだよな。
『ちょっと来いよっ』
腕を引いてコツンと額を合わせた。
瑞季の顔が真っ赤に染まる。
『やっぱ赤いぞ!…この方法じゃ熱あるかわかんねぇな』
「わっ!分かんねぇならいちいち顔近づけてんじゃねぇよっ!!飯っ!腹減ったっ!!」
ドンと胸元を押されて離れる。
『ハイハイ、食堂行くか…あっ!身体キツイなら言えよ!』
「おまえは俺の保護者かっ!!」
『ん〜、まぁ…みたいなもんじゃねぇの?』
瑞季は俺の言葉にバンっと肩を叩いて部屋を先に出て行く。
『なぁんだよぉ〜』
「るせー!バーカッ!」
『バカバカ言ってんじゃねぇよ!』
ほんっと昨日のシャワールームの後といい、今といい、プンスカプンスカ、女の生理かよ。
先々行ってしまう瑞季の後を追うように通路を歩いた。
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