第9話

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食堂は賑わっていた。

パンの香ばしい香りが充満していて、気分が良い。


『バイキングみたいだな…一緒に行くだろ?パン種類あるし』

「そうだな…」

二人でバスケットをトレーに乗せてカウンターを横に移動した。

一口サイズのパンが何種類かカゴに山盛りに盛ってある。

俺も瑞季もそれなりに数をバスケットに入れて飲み物の場所へ移動した。

グラスにオレンジジュースを注いで瑞季のトレーに乗せる。

瑞季は牛乳が大嫌いだ。だから身長伸びないんだよ。

俺は牛乳を注いで席についた。

朝は混雑していて、俺と瑞季は向かい合わせに座れず、隣合わせに座った。

暫く無言でパンを頬張っていたら、口元に

俺が選んでないパンが差し出され、躊躇なくソレにパクっと齧り付いた。

瑞季の方を見て

『うまっ!』

って言ったら、満面の笑顔で

「だろ!孝也、絶対好きなヤツだと思った」

って言うから、一瞬ドキッとした。


いや、変な意味じゃない。

断じて瑞季を変な目で見てる奴等と俺は違う。

俺は…瑞季を守らなきゃならないんだ。

中学の頃はここまで心配しなかった…。

だけど…最近のこいつの成長は正直参る。

どんどん男らしくなるならまだしも…どんどん綺麗になっていくんだから…。


ザワザワと騒がしい食堂の中で、差し出されて口に入れたパンがいつまでも喉の奥に引っかかってるみたいだった。


今日から始まる学校生活を思うと…何度も何度も友達から聞いたあの嫌な話が蘇ってくるからだ。

幸いな事にクラスは同じ…。

俺達が離れるのなんて、便所くらいなもんだ。

瑞季には気付かれないように周りに気を張らないと…アイツのプライドが許さないだろうからな。

朝食を終えた俺達は寮に戻って鞄を手に桜吹雪が舞う中、学校へ向かった。

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