第93話

叔母さん…は、どうしようもないか。


あの人は機嫌を取れば済む様な人じゃない。



もう流れに身を任せるしかないかな。



一番ヤバいのは叔母さんが叔母さんの意思でこの家を出てしまうことだ。


そうなれば私は叔父さんとこの家に二人っきりになってしまう。


まぁさすがにそうなれば叔父さんは叔母さんを止めるだろうけど…



その時は私は施設にでも入れられるんだろうか。


単に追い出されるだけじゃないことと叔父さんから離れられることを思えば、それが一番良いのかもしれない。



私にとっても、叔母さんにとっても。





私はいつものようにシャツの上にセーターを着ると、その上からブレザーを着た。


昨日あれだけ濡れていたブレザーやスカートなどはしっかりと乾いていて、朝起きたら部屋のクローゼットの持ち手の部分にハンガーで吊るされていた。


もちろん叔母さんが持って来てくれたんだろう。


それから乾いていたのは制服だけではなくて、濡れたまま放置していた鞄だってしっかりと乾いていた。



はっきりとは分からないけれど、あれもこれもきっと叔母さんがしてくれたんだと思う。



ブレザーからは雨の嫌な匂いなんて全くしなくて、洗濯なんてしていないはずなのにほんの少し良い匂いがした。




昨日叔母さんにあんなことを言われていた私だけれど、だからと言って叔母さんに腹が立つようなことはなかった。


だってそりゃそうだもんね。


叔母さんの言っていたことは何も間違っていない。


あんな風に思うのも無理はないよ。



突然夫が連れて帰ってきた女子高生を姪っ子だと言われてそのガキの世話を当たり前のようにやらされているんだもん。



なんなら一年以上もよく耐えたものだと褒めてやりたいくらい…


…って私は一体何様だよって感じだけど。





叔母さんは悪くない。


元を辿れば悪いのは私のお母さんなんだから。


あの人が死ななきゃお父さんだって死ななかったし、私だってこうはならなかった。



勝手な都合で死んで赤の他人である叔母さんに迷惑をかけることになるなんて、きっとあの二人は思いもしなかったんだろうな。


まぁそれすらもあの二人らしいんだけど。



アイツらの人生、マジでくだらないわ。






「……ま、私はそんな二人の愛の結晶なんだけどね」






全身鏡の中に映る私の目はとても冷めていた。



冷たい目をしてる…




そう思うのと同時に、私はあの先輩を思い出した。

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