第85話
「うん、分かった!!」
叔父さんはなぜか慌てたように「じゃあね」と言って、今度こそちゃんと部屋を出て行った。
“じゃあね”も何も同じ家にいるじゃん…
叔父さんの最後の焦りは正気に戻ったからなのかな。
わざわざ部屋のドアまで閉めて、一階には叔母さんだっているのにあの人は今私に何をしようとしてたんだろう。
私が抵抗しなかったら、私は一体どうなっていたんだろう。
私はスカートの中のあの鍵を取り出すと、目の前の勉強机にそっと置いた。
それから鞄の中から携帯を取り出して画面を確認すると、あれだけの雨に打たれたにも関わらず内ポケットの奥に入れていたおかげで携帯は何の問題もなかった。
鞄に入れていたノートや教科書は端の方が全部濡れていたけれど、いつもほとんどは学校に置きっぱなしにしているおかげで荷物も少なかったからそれも最小限に済んだ。
「はぁ…」
体は依然重くて、濡れているせいで凍えるように寒い。
暖房は必死にこの部屋を温めようと温風を出し続けているけれど、私が一向に着替えようとしないせいで私の体は冷えたままだった。
私はもう一度そのまま椅子に腰を下ろすと、さっき鞄の中から取り出した携帯を持ち上げて少し操作しすぐにそれを右耳に押し当てた。
こういう時ばっかりは女友達の一人くらい作っておけば良かったって思っちゃうよなぁ…
『ガチャッ———…もしもし?』
つい数十分前まで目の前で聞いていたはずの川口の声に、私はなぜかまた泣きそうになった。
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