第81話

———…コンコンッ



「…マリ?……開けるよ?」




返事がないことがどうしてドアを開けても良いことになるのか…


叔父さんはゆっくりと私の部屋のドアを開けた。



———カチャ…



理解は全くできないけれど、拒否もできない。




だって私ってこの家の二人からすれば赤の他人だから。




「マリ?気付かなかったよ。いつのまに帰って———…」


そう言ってパタッとスリッパで一歩部屋に足を踏み入れるような音が聞こえたかと思うと、



「びしょ濡れじゃないかっ…!!!」



叔父さんの珍しく大きな声が部屋に響いた。



「……」


「この雨に濡れたの!?」




…いやいや、しかなくない?


雨以外でここまでどうやって全身濡れんのよ。




「待って、バスタオル持ってくるから…!!!」


叔父さんはそれだけを私に伝えると、部屋のドアを開けたまま慌てたように部屋を飛び出して行った。



私は依然背を向けて俯いていたからよく分からなかったけれど、一階へ降りたらしい叔父さんが叔母さんに「マリがびしょ濡れで———…」みたいな説明らしきものをしているのが微かに聞こえた。





…あぁ、また私、叔母さんに嫌われちゃう。





バタバタと慌てるようなスリッパの足音が階段を駆け上がってこちらに近付いてきたかと思うと、はぁ、はぁ、と息を切らしながら「ごめんね、お待たせ」と叔父さんの少し慌てるような声が聞こえた。



それにも私は何も言わなかった。

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