第79話

「三人で暮らすのも楽しいじゃないか」


「楽しい?冗談でしょう?」





…なんだ、離婚とかじゃないのか…



私はてっきり…




「他人が家にいるのに楽しいわけないじゃない」





私の心臓はいつの間に鎮まったんだろう。





…重い、



制服が雨をこれでもかというくらいに吸って、とにかく体が重い。




でもこれはきっと雨だけのせいじゃない。





「マリは他人じゃないよ。僕達の可愛い姪っ子じゃないか」


「私はあなたのお姉さんには死ぬまで会わなかったのよ?それなのに急に姉の子供だと言われたって私からすれば赤の他人としか思えないに決まってるじゃない」














叔母さんの言っていることは正しいと思った。


私だってそうだもん。


口では“叔父さん、叔母さん”と呼んでいるけれど、そのニュアンスは叔父さんというより“おじさん”、叔母さんというより“おばさん”。


確実に他人に近いそれになっていたと思うから。


叔父さんはともかく、叔母さんにはそれも感じ取れてしまっていたのかもしれない。


まぁきっとそれ以前の問題だとは思うけれど。




「この一年、私なりに努力はしてきたつもりだけど私はあなたのようにはどうしても思えない」




だからこの展開もきっと、仕方な———…






「早く出て行って欲しい」






…仕方、ない。

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