第77話
お父さんがお母さんを大好きなのは仕方ない。
お母さんがお父さんを大好きなのも仕方ない。
そこで私が邪魔になってしまうのだって仕方ない。
二人は死んだ、仕方ない。
一人になった、仕方ない。
叔父さんに変な性癖、それも仕方ない。
それに川口だって…
それならもう私が死んだってきっとそれも“仕方ない”。
死ななくたってそれも“仕方ない”。
“仕方ない”で覆われた物事の結末はどう転んだって結局は“仕方ない”結末になってしまうんだと思う。
家に着く頃には私の制服は全身雨を吸ってとても重かった。
叔父さん怒るかな。
いや、怒りはしないか。
興奮するかな。
「ふっ………それはありえる…」
夏じゃないだけまだマシだ。
シャツ一枚で下着が透けたりでもしようものなら、私の知らない間にそんな私もいつかまたあの『趣味』のフォルダに入れられてしまうかもしれないから。
私の制服姿とか、いつ撮ってたんだろう…
家の門を自分で開けて玄関まで足を進めれば、真横に位置するリビングには電気がついていた。
私のこんな姿にあの二人は怒りはしないだろうけれど、だからと言って叔父さんに勝手に興奮されるなんてたまったもんじゃない。
リビングにいるであろう二人に気付かれないように、私はそっと玄関のドアを開けて中に入った。
とりあえずここで靴と靴下を脱いで…
鞄にハンドタオルを入れておいて良かった。
それで足を拭いて脱衣所に直行して、着替えは部屋にしかないからバスタオルを持ってそのまま部屋に上がろう。
で、自分の部屋で服を着替えて髪を乾かしてから私もリビングに———…
「もうその話はやめようって言ったじゃないか」
突然叔父さんのいつになく低い声が聞こえて、立ったまま右足の靴下を脱いでいた私は思わずそのままの中途半端な体勢で動きを止めた。
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