第73話
「別に。コイツ女の子じゃねぇから」
そんな失礼極まりないことを言った川口の背中を、私は川口のお母さんには気付かれないようにグーで軽く後ろから殴った。
「何言ってんの、あんた!!」
「大丈夫ですよー」
私がひょっこりと川口の背中から顔を出せば、川口のお母さんはすぐに川口から私の方へと目をやった。
「こんな遅くまでお邪魔しちゃってすみませんでした」
「それは全然いいんだけど…雨まだすごいよ?おばちゃんが車出してあげようか?」
「近いので大丈夫です。ありがとうございます」
私と川口のお母さんの会話に、川口は何も言わなかったけれど顔はとても不満そうだった。
自分の親と私が仲良く話すのが気に入らないんだろう。
お年頃ってやつ?
川口も普通の男子高校生なんだな…
「マサヤ、駅まで送ってやんなさい!!」
そう言えば川口の下の名前って“マサヤ”だったな…
普段川口の下の名前をわざわざ思い出したりもしないしクラスのみんなも川口のことは苗字で呼ぶからか、下の名前で呼ばれる川口を見るのはなんだか新鮮だった。
「分かってるって」
「ついでにあんたの大きい傘も貸してやんなさい」
「もう分かってるって!!いちいち出てくんなよ、気持ち悪りぃな」
「こら!!!」
「いや、ここまでで大丈夫だよ」
私が川口を見上げてそう言えば、少しヒートアップしかけていた二人はすぐに私を見た。
「ここから駅も近いし」
「いいのか?」
「うん!」
私は川口にそれだけ言うと、二人に背を向けるように玄関に座って靴を履いた。
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