第69話
「お前は俺のそばにいればいいから」
「…うん」
たまに思う。
私達の関係って何なんだろうって。
今もし川口のお母さんがこの部屋に来て私達のこの光景を見たらやっぱり彼女なんじゃないかと思うだろうし、本当にさっき手を洗う川口を見て何かを勘付いたのだとするならば川口がどれだけそれを否定したってやっぱり彼女なんだと思うと思う。
でもそれをまた更に川口が否定したところで川口のお母さんは深く追及してその関係を明らかにはしないだろうし、クラスの誰に聞かれたって私達はお互いに“付き合っていない”と言うんだろう。
それでいい。
はっきりさせなくたって、私達がそれでいいなら何の問題もない。
ただ、川口に彼女ができればそうはいかない。
私達だけの問題では済まなくなる。
“俺のそばにいればいいから”なんて、私以外の人のことを“ちゃんと考えて”いる人の発言とは思えないな。
「川口さ、白川さんどうすんの」
私が気になるのはやっぱりそこか。
ていうか二人が本当に付き合えば私って完全に部外者だし、白川さんにとってはもうすでにかなり邪魔な存在だと思う。
となればやっぱり私達の関係は今週で終わるのかな。
だってさ、私と川口は中二の時からの付き合いのはずなのに、セックス以外の繋がりがどんなものだったかなんてもう私は覚えちゃいないんだよ?
中学の時の私と川口ってどんな風に毎日を過ごしてたっけ?
どんな話をして、どんなことで笑い合って、ふとした暇があれば私達は何をしていたんだろう。
絶対にキスではなかったはずだ。
「まだ分かんねぇよ。今日言われたとこなんだぞ?」
「時間関係ある?」
「あるだろ。来週まで考えろって言われたんだから」
「……」
コイツ、真面目かよ…
別に来週まで考えてみてって言われたって答えが出てるなら考える必要なくない?
それってむしろ付き合う理由を無理矢理探してるってことにはならない?
それなら———…
そこまで考えて私はハッとした。
私って結構バカなんだな。
…違うよね、川口。
答えが出てないから川口は考えてるし“分かんねぇ”って言ってるんだよね。
なに都合よく頭の中で川口の気持ちを決めつけようとしてるんだろう。
川口は迷ってるんだったよね。
川口にとって白川さんはアリなんだよね。
じゃあさ、私ってこれからどうなるの…?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます