第66話

「でも外で出」


「何言ってんのよ、やめやめ」


私は下着の中に入っていた川口の右手を腕ごと引き抜くと、そのまま右足の裏で川口のお腹あたりを押した。


でも、川口は私の上から体を退かそうとはしなかった。



「ほら、やめてってば。どいてよ」


「大丈夫だって、絶対ちゃんと腹の上に出すから」


「ないない、あんたバカ?」


しっかり足で川口の体を押し離すと、私はすぐに体を起こして乱れかけていた制服を整えた。


川口はそのまま正座するような形になり、じっと私を見つめていた。



「じゃあ先っちょだけ」


「ダメだっつうの。ほら、早くあんたもシャツ着て手ぇ洗っといでよ」


川口の脱いだシャツを無理矢理持たせると、川口はまだまだ不満たっぷりの顔で何も言わずにそれを受け取った。


別に川口はTシャツを着ていたからシャツをわざわざ着る必要はなかったと思う。


でもさすがに半袖のTシャツでこの部屋を出るのは寒いかなっていう私の気遣い。


でも、川口は一向にそれを着る気配はなかった。



「何?不満?」


「……」


「言いたいことあるなら言ってくんなきゃ分かんないよ」


「…生き地獄かよ」


川口は持ったままのシャツに目線を落としたまま、呟くようにそう言った。


「私だって寸止めくらってんだよ?」


「でも男と女はちげぇだろ?」


そう言って顔を上げた川口は泣きそうな顔をしていてなんとも情けなかった。


「違わないよ。私だってイキたかったもん」


「俺が言ってんのはそこじゃねぇって!!男は目に見えてアレがおさまんなくなるだろってこと!!」



あぁ、そういうこと…



でもそれって見た目の話でしょ?


だからって何が違うの?


気持ち良くなりたかったんでしょ?


フィニッシュしたかったんでしょ?



だったらやっぱりそれは川口も私も変わんないじゃん。



「はぁ…なら今から私押し倒して無理矢理挿入しなよ。今なら濡れてるからすんなり入るだろうし」


そこまで言うと、また目線を落としていた川口は目だけをこちらに向けた。



「でも一応言っとくけど私はちゃんと抵抗したからね?“やめて”って」



川口が前に言っていた通り、私は川口のことをよく分かっていると思う。




川口はまだ不満はありそうだったけれど、しばらくすると持っていたシャツに何も言わずに袖を通した。







「…やっぱり川口は優しいね」


「…これぐらいで優しいとか大袈裟なんだよ。てか俺以外だったらお前とっくに押し倒されてるぞ」


川口はそう言って立ち上がると、私の頭にまた右手を乗せてポンポンと軽く叩くと部屋を出て行った。



きっと手を洗いに行ったんだろう。



“川口以外ならとっくに押し倒されてる”なら川口はやっぱり優しいってことじゃん。



川口って本当私の頭触るの好きだよなぁ…



てかさっきまで私のソコを弄ってた右手で触るか?普通…



「ったく…」



私は改めて身なりを整えるとまたさっき読んでいた漫画に手を伸ばしてそれを読み始めた。

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