第63話

これは間違いなく顔をそっちに向けないと再開してくれない流れだろう。


依然眉間にシワを寄せながらまた目の前にいる川口の方へ顔を向けた私はきっとこの上なくいやらしい顔をしていたんだと思う。




「…ヤバっ…」


川口は独り言のようにそう言うと、摘んでいた私の胸の先端をまたグリグリと転がし始めた。




この目に見えない中での刺激がとにかくエロくて、おまけに川口がこんな至近距離でこれでもかというくらいに真っ直ぐに私を見つめるもんだから私はすぐに息が上がり始めた。



「はぁっ、はぁっ、はぁっ、」


「イキそう?」



胸でイッたことなんてない。


そんなことができるのかどうかだって分からない。


でも私はもうすでに両膝をスリスリと擦り合わせていて、十分に高まった私の体の奥はしっかりとその刺激に疼いていた。


だから私は何かを考えるよりも先に、気付けば川口のその質問に素直にうんうんと首を縦に振っていた。





「…マリ、キスして」



そう言いながら私に顔を近付けた川口とのキスは、“して”と言われたにもかかわらずどちらからしているのかもよく分からないほどにお互いが貪り合うように舌を絡めていた。




私、このまま胸だけでイッちゃうのかな…




そう思っていた私だったけれど、確実に押し寄せていた波は私の頭を攫って行ってはくれなかった。


波に乗れなかった私が悪いのか、そもそもその波はイク寸前の波とは別のものだったのか…


経験の浅い私にはよく分からないけれど、そんな私に川口は特に変わった反応は示さなかった。



唇を離すと、川口はすぐに私から体を起こして膝立ちになると着ていたセーターを脱ぎ捨てた。



「…てか自分だってセーター着てんじゃん」


「男は自分で脱ぐんだからどっちでもいいんだよ」


「そうなんだ…」


私はポツリとそう呟きながら、目の前で自らシャツのボタンを一つ一つ外していく川口をぼんやりと眺めていた。



何で脱いでるんだろう。


私はたぶんシャツまでは脱がないのに…


今だって一応私はまだブレザーに袖を通したままなんだよ?


それともこれから私も脱がされるのかな?




…あ、そっか。


分かったわ。




川口って左が感じるんだもんね。



舐めて欲しいんだ。



今日は左のどこを舐めて欲しいんだろう。




「俺、マリとのキス好きだわ」



ボタンを全て外し終えた川口は、これまた乱暴にシャツを脱ぎながら私にそう言った。

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