第62話

「それにセーターまで着やがって」


「だって寒いし」


「じゃあせめて中のシャツはスカートから出しとけよ」


川口は仰向けになる私のスカートからシャツを少し乱暴に引っ張り出しながらそう言った。



「やだよ、シャツはみ出てるとかダサいじゃん」


「じゃあ俺の家来る時だけ」


「それもそれでヤる気満々みたいで嫌」



私達は会えば必ずヤるわけじゃない。


私にだってその気がない時はあるし、川口にだってその気がない時はあるはずだ。


それなのに私だけがヤる準備をしっかりして行くなんてバカみたいじゃん。



私のその言葉に川口はクスクス笑いながら「たしかに」と言うと、引っ張り出したシャツの裾から両腕を忍び込ませながらまた体を倒して私の首筋に顔を埋めた。


「っ、」


「気持ち良い?」


「んっ…」



電気ストーブのおかげか私の体は芯から温まっていて、入ってきた川口の手はそれよりも少しだけひんやりしていてそれが余計に気持ち良さを増幅させていた。




どんなに冬服は脱がすのが面倒だからとはいえ、


どんなに今が時間に追われていないとはいえ、


服を大して脱ぎもせずに進むこの行為に、やっぱり私達を繋ぐものはセックスによる快楽以外の何物でもないんだなと私は頭の中で再確認した。


もちろん全裸でセックスをしたことがないわけではないけれど、服を着たままと比べてみたって特にそれらには差がなかった。



差がないならどっちでもいい。



川口的にはそれなら手っ取り早く着たままヤりたいって感じなんだろうな。


まぁこれはこれで学生である今しかできないことだろうから、それを存分に味わうのも悪くはないとも思う。


制服ってちょっと興奮するし。








でも、そう思うのと同時に私が思い出すのは叔父さんのパソコンで見たあの卑猥な動画達だった。



今の私達って側から見たらあんな感じなのかな、…とか、






…嫌でも思っちゃうよね。





本当、あの画面の人達と私って何も変わらないな。





…いや、だめだ。


あんなのと一緒にされるとかたまったもんじゃないよ。


私達はあんな冷たい画面とは全然違う。



川口の体温をしっかりと感じ取ろうとまた川口の首に両腕を回すと、ちょうどそれと同じタイミングでブラのホックが外されて川口の両手が背中から前へと回ってきた。



川口の指先が私の胸の先端に当たれば、私は自然とビクッと体を震わせた。


「お前本当ここ弱いな」


「川口は本当に胸触るの好きだよね」



川口はフッと笑うと、私を見つめたまま私の胸の先端をシャツの中の指先で転がし始めた。





川口は単純に胸が好きなのか、


それともそれに大袈裟なほど感じてしまう私のこの反応が好きなのか、



私が眉間にシワを寄せて思わず顔を逸らせば、川口は「こっち向けよ」と言いながらすぐに指先の動きを止めた。

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