第54話
「うん?」
「隣のクラスの白川って子知ってる?」
「白川…あー、うん。あのポニーテールの子」
「そうそう。俺今日その子に告られたんだ」
「おぉー!マジで?やるじゃん!なん……」
そこまで言って、私は思わず足を止めた。
それにすぐに気付いた川口も私と同じように足を止めてくれた。
「おい、急に止まんなよ。濡れちまうだろ」
「…付き合うの?」
私、何で一瞬他人事のように浮かれちゃったんだろう。
「展開早えって」
「だって好きって言われたんでしょ?」
「…言われた」
「ならこれから先は付き合うか付き合わないかしかなくない?」
だって私達を繋ぐものって、彼女がいたら成り立たないものでしょ?
川口が誰かのものになっちゃったら、私はこれからどうやって生きていることを実感すれば———…
「…“来週まで待つからまだ答えは出さないでちゃんと考えて欲しい”って言われた」
「そっ……か……」
川口、迷ってるんだ…
まぁそりゃそうだよね。
川口が迷うのも無理はないと思う。
川口に告ったと言う隣のクラスのその白川さんのことはよく知らないけれど、見た感じあれは男ウケのいいタイプだと思うし。
私がゆっくりとまた歩き始めると、川口もすぐに歩き始めた。
私はまた無意識で右手をスカートのポケットに入れてあの鍵を握りしめていた。
まぁ仕方ないよね。
考えてみればいつかはこうなってたとも思うし。
これで私が生きてるのか死んでるのかいよいよ分かんなくなったとしたら、その時はもうあそこから落ちればいいんだよ。
それで死んじゃえば“あぁ、生きてたんだ”って分かるだろうし。
…いやまぁそれが分かった時には私はもう死んでるんだけどさ。
そう思うと同時に、あの日あの先輩の言っていた“死んだら全てリセット”という言葉が頭に浮かんできた。
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