第28話
川口に対しての申し訳なさと、それをほんの少し上回るくらいの感謝と、それらをはるかに上回る嬉しさに私は目の前の屋上のその先から目が離せなかった。
この屋上の端であり、その終わり。
あれより向こうにはもう十何メートルも真下の地面しかない。
立ちたい…
いざそこに立ってしまえば今までよりも強くお父さんの声が聞こえるかもしれない。
でも私はそれに頭や体を持っていかれたりなんてしないだろう。
だって私は今間違いなく生きている。
今朝あんなにもはっきりとそれを自覚したところだし。
死んだ人間に負けてたまるか。
大丈夫、今ならそこに立ったって何も問題なんてない。
…ってまぁ何か問題があって飛び降りてしまったところでそれに気付いた時には私はきっともう死んでいるから、後悔も何もあったもんじゃない。
ならもうそこに立たないなんて選択肢はないよね。
誰に対する言い訳なのかも分からないようなことを頭の中で繰り返しながら、その先に導かれるように私は足を進めた。
そこに立たなくても分かる。
…高い。
たかが四階。
されど、四階。
間違いなく人が死ねる高さだ。
でも、両親と住んでいたのは二階建てのアパートだったし今のあの叔父さんの家だって二階建てだからこの高さを私はまだはっきりとは知らない。
ここまで来れるということは高所恐怖症とかではなさそうだな…
———…コツン。
屋上の端であるその目の前まで来た私は、そこに立つ前に足を止めた。
屋上の端は一面を囲うように段差があった。
柵も何もない。
だから鍵がかかってたのか…
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