第27話

屋上に着くと、私は念のためにゆっくりとそのドアノブを回して鍵がかかっているのかを確認した。



もちろん鍵はかかっていた。



「そりゃそうか…」




でも大丈夫。


私にはこれがあるから…!!



私はすぐにポケットに入れておいたあの鍵を取り出すと、周りに誰もいないことをしっかりと確認してから迷わずその鍵穴に差し込んでゆっくりと鍵を回した。


カチャッとなんとも頼りない音で鍵が開くのが分かって、私はそのいけないことをしている感じや待ちに待った場所だという感じに少しワクワクしていた。





ガチャッ…





開いた…!!!



ドアが開いた瞬間から外の暖かい空気が校舎内に漏れるように入ってきて、そのどこか生温いような空気すらも待ちに待った場所だったからなのか不快な感じは全くしなかった。





当たり前に目の前に現れた外の空気に、私は何故か少し感動していた。



大袈裟だということは自分でもちゃんと分かっている。


だって渡り廊下を通ってこっちの校舎に来ている時点で私はもうすでに外の空気に触れているんだから。



でもやっぱりここは特別だ。





…いや、違うな。


特別なのはきっとこの“高さ”だ。






中庭の方からかすかに他の生徒の小さな声が聞こえてきて、川口に言われた“バレないように気をつけろよ”を思い出した私は慌てて屋上へ出てその戸を閉めた。






なんか悪いことしてるみたい…


…てかたぶん悪いことしてるよね、これ。



しかも川口まで巻き込んじゃってるし。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る