第23話
川口は呆れるようにフンと鼻で笑うと廊下の先を見るように正面へ向き直った。
「だってさ、じっくりヤりたいじゃん!さっさとイッて終わりってつまんなくない!?」
私が同意を求めるようにそう言えば、川口は歩いていた足をいきなり止めてこちらを見た。
「…悪い、じゃあお前今物足りねぇよな?」
川口はおそらくさっき私をさっさとイカせたことを言っているのだろう。
川口は良い奴でおまけに賢い奴だ。
きっとあの時から川口には急がなきゃという思いが頭にあっただろうから。
もう目の前の気持ち良さしか頭になかった私とは大違いだ。
「いや、私はそうでもないよ。あの誰か来たらどうしようっていうドキドキ感たまんなかったし」
気遣うような目で私を見る川口を安心させるためにそう言えば、川口はすぐにフッと笑って「変態」と言うとまたすぐに教室に向かって歩き始めた。
私自身のことで言えば、セックスの内容なんて何の関係もない。
イケさえすれば頭は真っ白になって生きているんだと強く実感できるんだから、きっと私はそれさえあればいいんだと思う。
ただそれを川口にも押し付けて雑なセックスを繰り返すのはそれはそれでちょっと違うかなって思ってるだけで…
これもきっと川口に言ったって分かってはくれないだろうな。
生きているのかどうかが分からなくなるとか、
生きてる実感が欲しいとか、
きっと普通の人間ならそんなこと思ったりはしないだろうから。
私って多分普通じゃないんだ。
教室に着いて川口と別れて自分の席に行こうとした私に、「あ、そうだ」と川口は何かを思い出したかのようにその足を止めた。
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