第16話
「どんなって?」
「死んじゃいたいくらい?」
「は?いやお前何言ってんだよ。いきなりぶっ飛びすぎだろ」
「じゃあ何!?どうしたいとかあるの!?」
気付けば私は膝立ちをしてベッドに手をつき前のめりになっていた。
「…そりゃああるだろ」
「何!?何がしたいの!?」
今思えばあれは完全に私が言わせたようなものだったとも思う。
無知って怖いわ、マジで。
どうやら“知識があること”と“無知ではないこと”はイコールではないらしい。
知識があったって、私みたいにそれを活かせなきゃ何も知らないのと同じだ。
この時私に聞かれたことを素直に答えていただけの川口は、きっと何にも悪くはない。
「触りたいとか思うだろ、普通に」
「へぇ…!」
“あれ?川口って私に触ったことないんだっけ?”なんて疑問が頭に浮かんだけれど、まぁそんなことは今はどっちでもいいし川口は良い奴だから川口がそうしたいなら別に良いか。
本当に本当に、軽い気持ちだった。
「んっ!」
私は両手を差し出すように川口に腕を伸ばした。
「は?」
「触っていいよ!ちなみに好きな人に触ってどう思うのかも教えてほしい」
触って満足するの?
この人がいない世界でなんて生きていけないだとか、二人だけの世界に行ってしまいたいだとか、そんなバカなことを思ったりするの?
だとしたら好きって感情はクソ以外の何ものでもないね。
川口、そんな感情は絶対に持つべきじゃないよ。
「いいのかよ」
「うん、いいよ。でも川口の今抱いてる気持ちはさ、私にはきっと一生分からないと思う。それでもいいなら、どうぞ?触ってみて?」
私は遠回しにその気持ちには応えられないよということを伝えたつもりだったけれど、はたしてこの時それが川口本人にちゃんと伝わっていたかどうかは定かじゃない。
だってそれからすぐにこちらに手を伸ばした川口は、私の差し出していた手ではなく私の胸に触れたから。
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