第5話
叔父さんが何の仕事をしているのかはよく分からないけれど、この家はとてもお金持ちだ。
叔母さんは専業主婦だけど、いつも動き回っていた。
夏休みで一日中家にいれば、私は叔母さんが朝から晩まで常に動き回っていることに気が付いた。
その忙しない様子はきっと普段学校に通う私以上だと思う。
誰も使っていない部屋の掃除をしていたり、廊下の隅でうずくまって角の埃を取っていたり、これまで二人暮らしだったとは思えないような大きな食器棚の中身を全て取り出して中の拭き掃除をしていたり…
とにかくだらだらゴロゴロしているところは見たことがない。
そんな叔母さんを見ていてなんだか可哀想に思えた私が「外に出たくないの?」と聞くと、叔母さんはいつものトーンで「出る必要がないから出ていないだけよ」と教えてくれた。
やっぱりこちらを見ることはなかった。
“出る必要がない”って…
それってお金のこと?
でもお金があるからってずっと家にいるなんて、そんなのは叔父さんに“餌はやるからとずっと鳥籠に入っていろ”と言われいるような気分にはならないんだろうか。
飼われているような、召使いのような…
こう言っちゃあなんだけど、私から見れば叔母さんはもうこの家のお手伝いさんに近い。
まるでこの家に住むメインの人間が私と叔父さんかのようだ。
夏休みに入ってから叔母さんの一日を密かに観察していると、叔母さんは一通りの家事が終わると毎日庭に出て花や草の手入れをしていた。
その時の叔母さんは、笑いはしないものの少し楽しそうだった。
それから庭でたまにお隣さんとお喋りをしている。
なんだ、楽しみもちゃんとあるんだ。
嫌われている身ながらに、そんな叔母さんに私は少しホッとした。
それでも私の中に芽生えた叔母さんの囚われ感は拭いきれなくて、
もし働きたいとか思っているなら私は全力で応援するのにとか、
自分で言えないなら私が叔父さんに言ってみたっていいんだよ?とか…
もっと自由に生きればいいのになんて呑気なことを心の底から思っていた。
買い物に出かけたりもしているから完全に囚われているわけではないと思う。
ただ、自由さには欠ける気がする。
余計なお世話だけど、そんな叔母さんが私には不憫でならなかった。
その日私は自分の部屋で夏休みの課題をしていて、叔父さんのパソコンを借りるべく私は新しく叔父さんの書斎となった部屋にいた。
単なる興味本位だった。
それにここまでお金に余裕のある叔父さんが普段どんな仕事をしているのかも少し気になっていたから、
だから私は、何気なくパソコンの閲覧履歴をクリックした。
「———…っ、」
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