第83話

それはちょうど職員室に着いたタイミングで、担任は「持ってくるから」と言って私に廊下で待つよう指示した。



“目立つ”って…そうならないためにこんな今時らしからぬ三つ編みで毎日毎日学校に来ているというのに…


それにそんな意味不明な理由で“万引きしてた”なんて嘘を言われたらたまったもんじゃない。





廊下で一人、壁にもたれかかりながら待っていた私だけれど、なかなか出てこない担任に私はそっとドアへ近付きその中を覗いた。


そうすれば担任は他の先生に何か言っていて、それからすぐにその先生に誘導されるように近くのダンボールへと移動していた。


やっぱりあの人、私の言った“アジャスター付きの脚キャップ”が何のことか分からなかったんだな…




「おー、悪い、待たせたな。これだろ?」


絶対知らなかったくせにと思いつつも、私はそう言って差し出されたその手から脚キャップを受け取った。


でも、一つでよかったそれは四つもあった。



私の話聞いてなかったんだ…


もしくは、また取られるかもしれないという親切心から四つ渡したのかな?



「また何かあればいつでも言えよ!」


「…私接着剤もって言いました」


「おー!そうだった!すぐ持ってくるからな!」


「……」


それからすぐにまた一度職員室に入って再び戻ってきた担任は、私に接着剤を渡しながら「もうすぐ一限始まるぞ」と言った。


何にせよ、私の話はもう終わったらしい。



確かに接着剤を貸してほしいと言ったのは私だけれど、その理由だってちゃんと言ったのにそれを渡して満足するだなんて担任としてどうなんだろう。



やっぱりこの人には期待できない。


いや、それならある意味期待通りか。



「ありがとうございます」と言って軽く頭を下げ、私は教室へスタスタと歩き始めた。



もしかすると、こうしている間にも私の机の脚についている三つのキャップのうちいくつかは取り外されている可能性もなくはない。


そうなれば、新たに四つ貰ったのは返って助かったかもしれない。



それでもできるだけ取られたくはなかった。


全て取られてしまっては昨日のセイの厚意を全て無駄にしてしまう。

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