第78話

「まぁどうせ今日また放課後会えるし、そしたらその不安も消えるって。それにあんま成長焦らせたらアイツも可哀想やろ?俺らは温かい目で見守ってやらな」


「そうだね…」


「はは、全然響いてへん」


私とは打って変わって何にも気にならないらしいセイは、「じゃ」と言って自分の教室へと向かって行った。



セイの言ったことはきっと正しい。


そう、頭ではちゃんと分かっている。


いつでも楽観的なのが羨ましいな…



どこかすっきりしない気持ちで教室に入れば、どこからともなく数多くの笑い声と視線を浴びせられて私は思わずハッとした。



コトラのことに夢中で、この教室に自分の居場所がないことなんてすっかり忘れていた。


それだけ私にとってはこの教室で置かれている状況なんてどうでもいいんだろうな。



その時、ちょうどスカートに入っている私の携帯がブブッ、ブブッと短く二回震えた。



どうしてだろう。


いつもなら誰かな?なんて思うこともなく無視をするのに、なぜかたった今別れたばかりのセイかもしれないという思いが頭に浮かんで私は自分の席を目指すよりも先に携帯を取り出しラインを開いた。



そしてそのよく分からない予想は見事的中した。



『これ、猫の成長過程やって』


そんなメッセージと共に送られてきていたのは実物の猫の写真と月齢を分かりやすく表にまとめた画像だった。


へぇ…猫って生後十ヶ月くらいまではまだまだ見た目は子猫なんだ…



———…ブブッ…



『問題なし』



再度送られてきたその何の味気もないメッセージに、私は思わず口元が緩んだ。


よかった…



『ありがとう。安心した』と返信をすればよく分からないスタンプが送られてきて、私はそっと携帯を閉じた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る